らしく。

作詞をしています。

タバコ

夜にタバコを吸うのがひとつのルーティンだ。

大体2本か3本くらい、日によってまちまちの本数を消費する。

バカだよな、と思ってはいる。喫煙は緩やかな自死だ。


ただ、静かな空間にフィルターの燃える音が聞こえる瞬間だとか、吐き出した煙が戯れに丸まってから消えていくのとか、そういうのが好きで、タバコをやめられない。


吸い始めた頃に比べて値段も高くなった。

いつもタバコと一緒に何かしら買い物を済ますので単体の値段を把握していなかったが、この間1箱だけを購入して静かにギョッとした。お前、もうワンコインにすら収まらないのか。


初めて吸った頃は、カッコつけで吸っていた部分もあった。蒸かさず肺まで入れる吸い方をしたくて一人で練習して、よくケンケン噎せていた。

今は噎せることもなく、肺を黒く汚したり、鼻から吐いたりしている。


人差し指と中指を横にしてつまめる長さまで吸う、という、誰にも伝えていない密かなルールもあった。最近は、唇で熱さを緩く感じる程度の長さまで吸ってしまっている。流石に熱いな、と思ってようやく種火を消すのだ。


最初はよく理由を聞かれた。恋人の影響か、ストレスか、誰かに憧れたか。いつも適当に笑って、二十歳の記念、とか答えていた。ほんとは、タバコを吸えば大人になれると思っていたからだ。大人になれば、その時のどうしようもない世界が全部、どうにかなるんじゃないかと思っていた。忙しさから患った不整脈も、上手くいかない友人関係も、将来への不安も全部。結局、どうしようもないままだったけど。


指で弾いて落とした火は、直ぐにただの灰になる。真っ暗な視界で煌々と見える赤は、瞬く間に思い出に変わる。けれどどうして、最後の種火は甘ったれだ。グズグズといつまでも、その先で明るく目立とうとする。

まだもう少し光っていたいと喚くのを黙らせて、夜の喫煙は終わる。


知らなくても生きていけたのに、知ってしまったせいで無くては生きていけなくなった。

体のことを思うとタバコを知らない人生の方が良かったのかもしれない。だけど私は、人生にはタバコが必要だと、思う。