らしく。

作詞をしています。

有楽町

有楽町という街が好きだった。

今も好きだ。


銀座が目と鼻の先にあって(なんなら街としてはほぼ同じ場所なレベルに)、疑いようのない都会だった。

だけれど、丸の内や新宿と違い、建物たちに個性があった。真四角にお行儀よく背筋を伸ばしているビルばかりではなく、ポコンと低かったり、ずんぐりしていたり。

都会の真ん中を歩いている時に感じる無機質さがなくて、有楽町は色んな色があった。

駅前は近代的な商業施設も多いから、そもそも歩くだけで一日過ごせた。映画館も確か無かっただろうか。それは日比谷か。


煌びやかな彩りに混じる、セピア色が特段好きだった。


一度メロンのパンケーキを友人と食べたことがある。

ただ単にメロン味なのではなく、見た目がそもそもメロンなのだ。美しかった。

皮にナイフを入れると、中からゴロンゴロン、メロンが溢れる。ちょっと楽しすぎやしないか。

子どもみたいにはしゃいだ。成人式なんて在りし日の事として話すような歳だったのに。

美味しかった。

裕福な家の出ではないから、いいメロンと悪いメロンの違いはわからないけれど、それでも、これはきっと今までで一番のメロンだと思った。

フワフワしたパンケーキも含めて、そう思った。


いつも使っていた出口の名前は忘れてしまったが、反対の出口(多分交通会館がある方)には、すこぶる美味しいチーズケーキがあるとか。

惜しいことに、私の有楽町の記憶には混ざっていない。


コーヒーと、背伸びをしすぎていない大人たちの香水の匂いばかり覚えている。

あの頃は軒並み閉まっていたガード下の飲み屋も、今はやっているのだろうか。


チキンステーキを食べながら、人生の方向について友人と語ったことがある。メロンとは別のやつだ。

楽しかった、どうしようもなく。


街全体のセピアの中に、思い出が鮮やかな彩りとなって、いつもそこにある。

多分、だから有楽町という街が好きだった。今も、好きだ。