らしく。

作詞をしています。

ホットワイン

ホットワインを作ろう。

右手のひらに左手の拳をぽふん、とぶつけるくらいの勢いで閃いた。

乗る予定じゃない、あと四駅で終点の電車に飛び乗った。一駅隣に行ければ問題ない。


余り物だから、と、ちょっといい赤ワインを貰った。渋みが控えめで飲みやすく、一度オレンジジュースで割って飲んでみた。美味しかった。二杯飲んだあともう一度コルクで栓をして、食器棚の上に置かれている。


美味しかったけど、晩酌をしないのでなかなか減らない。お酒だけでどうにか楽しめないかと知恵を搾って、出た結論がホットワインだ。


一度クリスマスマーケットで飲んだことがある。

キラキラした東京タワーのお膝元、そこだけドイツにワープしたみたいな異国情緒があって、物珍しさにホットワインを飲んだ。

外があんまりに寒いからすぐにただの風味付きのワインになってしまったけれど、美味しかった。ソーセージとの相性もバツグンだった。

あれを飲みたい。


大まかな材料はフルーツ、スパイス、蜂蜜らしい。

大雑把な性格なので、スパイスはシナモンがあればいいかと結論づけた。

フルーツはオレンジをひとつ買えばいい。なかったら、余ってるオレンジジュースでいいや。

蜂蜜は小さいのがあれば買おう。なかったら家にあるみりんでいい。


頭の中で自分のできる範囲と理想を組み合わせて、いい具合の落とし所を探る。

ほぼ自分よりの答え達だけど、飲むのも自分だけだから問題ないはずだ。


さて、成城石井である。

ひとつ隣りの大きな駅で降りたはいいが、生鮮食品を扱っているところに心当たりがないことに気づいた。

地下街を歩き回りながら、そういや成城石井なかったっけ、と回れ右。見つけた。



…シナモン、高い。

シナモンスティック、三本入り、約500円。

残っても使い道の思いつかないシナモンスティックに、500円。

粉末のシナモンは400円と少しだった。(あの量を使い切るまでかかる日数を考えると目眩がした)


もう一度、回れ右。

ホットじゃなくてもワインは美味しい。

500円で、チーズを買おう。