らしく。

作詞をしています。

辛いと甘い。

ランチに中華料理を食べに行った。


実は辛いものに滅法目がない。

そもそも美味しいものに目がないのだが、その中で特に辛いものだ。生半可では物足りない。食べた後に呼吸をすると外気の冷たさで口内の辛味を再度味わえる様な、湯気を吸い込むだけで咳き込むような、あの刺激が堪らない。


とはいえ、大前提として美味しいものが好きだ。


今日は二択だった。

牛タンの定食か、中華料理か。

白米を食べたい気持ちも大いにあって3回くらい揺らいだが、窓から見える景色は中華料理屋の方がいい気がしたので、中華料理屋にした。


中華料理屋で選べた定食は6種類。

辛そうなのは坦々麺と、店の屋号を冠したラーメン、後は麻婆豆腐。

店の屋号ラーメンは写真からして汁が赤く、所謂台湾ラーメン系だった。ひき肉、ニラ、モヤシの入った、サラッとしたスープ。

坦々麺は「激辛」を推していない限り辛くないことは経験値で知っていたので早々に除外した。


さて、麻婆豆腐か、屋号ラーメンか。


悩んだ挙句、プロに聞くことにした。

プロ、即ち店員さんである。


辛いですか?と聞くと、いやそんなに…と若干申し訳ない顔をされた。人によって感じ方が違うけど、と前置きの上で、からーい!とはならないらしい。

そうなのか…であれば普通に酢豚にしようかな(美味しそうだった)

と、少し悩んだところに、ぶっきらぼうな雰囲気の店員さんが付け加えてくれた。

「でも、辛いの食べたい!って時はこのラーメンですね」

「じゃあこれで」


結論から話そう。

辛くなかった。


体の芯がじわーんと暖まる様な辛味はあったが、麺は啜れたしスープも飲めた。胃の容量として飲めないので飲まなかったが。

だが美味しかった。火鍋というか、香味鍋のスープのような、ごま油のいい匂いがした。具の野菜もシャキシャキで美味しかった。

今度は、辛いラーメン目当てではなく、他のメニュー目当てに行きたい店である。


このお店では余談が2つある。


ひとつはデザートだ。

屋号ラーメンは定食だったので、黄色いプリンのようなデザートがついていた。固めのカスタードプリンにも、マンゴープリンにも思える見た目だった。

一口すくって、どっちかなぁ、どっちだろう、とワクワクしながらそぉっと食べる。

マンゴープリンだった。

この瞬間の、この喜びが伝わるだろうか。

マンガなら周りに小さい花がふよふよ浮いていたと思う。マンゴー、すごい。

繊維が見えるくらいちゃんとしたマンゴープリンで、あんまりに美味しかったので容器にくっついた所までスプーンでチマチマ掬って食べた。

そのチマチマ作業をしているところに、愛想のいい爽やかな店員さんがお水を注ぎに来てくれてちょっと恥ずかしかった。


余談のもうひとつは帰る前だ。

荷物をまとめて立ち上がると、近くにいた店員さんがありがとうございました、と声をかけてくれた。辛さについて教えてくれた店員さんだった。

「辛さ大丈夫でしたか?」

素直に答えた。

「全然辛くなかったです」

店員さんは笑っていた。でも美味しかったです、ともちゃんと伝えれたので、嫌な客にはならなくて済んだはずだ。


いいランチだった。